指数分布の確率密度関数について解説する。
指数分布の確率密度関数の定義を与え、解釈の仕方や指数分布の例についてを紹介する。
また、幾何分布やポアソン分布との関係についても触れる。
指数分布の期待値と分散や分布関数については次の記事を参照。
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指数分布の確率密度関数
指数分布の確率密度関数を紹介する。指数分布の確率密度関数は次の通り。
指数分布の確率密度関数
確率変数\(X\)はパラメータ\(\lambda\)の指数分布\(Exp( \lambda )\)に従うとする。\(X\)は次の確率密度関数を持つ。
\eqref{eq1}に示すように、指数関数から成る確率密度関数を持つことから上記の確率密度関数を持つ確率分布は指数分布と呼ばれる。指数関数\(e^{-\lambda x}\)は\(x \leq 0 < \infty\)において単調減少であり、指数分布は次の無記憶性という性質を持つ。
無記憶性の証明については確率分布の無記憶性を参照されたい。
他の確率分布との関係として、幾何分布やポアソン分布との関係がある。
を満たす十分に小さい\(p_n\)をパラメータにもつ幾何分布に従う確率変数\(X \sim Ge(p_n)\)について、\(n\to \infty\)のとき次が成り立つ。
成功確率が非常に小さいベルヌーイ試行を成功するまで続けるとき、試行回数を基準回数を表す\(n\)で割った確率変数は指数分布に従うことを意味する。
指数分布は、微小時間\(1 / n\)ずつベルヌーイ試行をし平均\(\lambda\)回成功する成功確率の小さい幾何分布を\(n\)で平均化したものとして捉えることができる。この性質と証明については幾何分布と指数分布を参照されたい。
また、最初のポアソン分布の事象が発生するまでの時間は指数分布に従うことが知られている。
\(N_t\)を時刻\(t\)までに発生した事象の数の確率変数とし、事象は単位時間\(t\)あたり\(\lambda\)回発生すると、\(N_t \sim Pois(\lambda t)\)である。最初の事象が発生するまでの時間の確率変数を\(T\sim Exp(\lambda)\)とすると
が成り立つ。指数分布とポアソン分布の関係と証明については、指数分布とポアソン分布の関係を参照。
余談ではあるが、自由度\(2\)のカイ二乗分布はパラメータ\(1 / 2\)の指数分布である。自由度が\(2\)のカイ二乗分布の確率密度関数は次のように、\eqref{eq1}の\(\lambda = 1 / 2\)のものと一致する。
指数分布の例
電球の故障時間を例に指数分布について見ていく。ある電球は平均\(\mu = 2\)時間で故障するとする。この電球が故障するまでの時間の確率変数を\(X\)とし、故障時間は指数分布に従うと仮定すると、\(X \sim Exp(1 / 2)\)が成り立つ。\eqref{eq1}の指数分布の定義だと、指数分布の期待値は\(1/ \lambda\)となるため、平均\(\mu\)の逆数をとっている。\(X\)はパラメータ\(1/ 2\)の指数分布に従うことから、\(X\)は次の確率密度関数を持つ。
電球が3時間まで故障しない確率は次のように計算できる。
他の\(0 \leq x \infty \)についても同様に計算できる。次のグラフの青い部分が電球の故障までの時間が3時間より大きいときの確率に対応する。
上のグラフで示すように、指数分布の確率密度関数は\(0 \leq x < \infty\)について単調減少であることが確認できる。このような特殊な密度をもつため、ある時間以降の確率はそれ以前までの確率に影響されないという性質が成り立つ。すなわち確率分布の無記憶性が成り立つ。